立ち寄り湯や一泊温泉では、浴感の好き嫌いが満足できるかどうかの最大の分かれ目なので、簡単に触れてみましょう。泉質名だけを見てどんな温泉かだいたい判断できるようになれば、温泉選びに大いに役立つでしょう。
単純温泉
だれにでも優しく、好き嫌いの出にくい泉質です。ただし、含有成分がどの塩類泉に近いかで浴感はだいぶ違ってきます。アルカリ性の強いナトリウムー炭酸水素塩泉(重曹泉)型のものは、滑らかな感触で、つるつる感があるので女性には人気があるようです。アルカリ性単純温泉と書かれているものには、このタイプが多いようです。
塩化物泉
ナトリウムー塩化物泉(食塩泉)はだれにでも分かるしょっぱい温泉です。
高濃度の塩化物泉(強塩泉)では、ふつうは微量にしか含まれない成分を明瞭に感じるほど含有していることが多いので、香りや味で面白い温泉といえます。
しかし、海岸に湧出するものは、海水が熱くなっただけのことがあるので、これは期待はずれになりがちです。山奥の塩化物泉をねらいましょう。
よく温まるといわれていますが、夏場は汗が引かないので辛いです。カルシウムやマグネシウムを含む含土類食塩泉(旧泉質名)は、浴後べたべたします。
炭酸水素塩泉
ほとんどがナトリウムー炭酸水素塩泉(重曹泉)で、滑らかさと浴後のさっぱり感が特徴です。夏場に向いています。皮膚を清浄にする効果が強いので、美肌の湯といわれています。アルカリ性の強いものでは脱脂効果も強力なので、保湿クリームなどで浴後にケアする必要があります。
カルシウムなどを含む重炭酸土類泉(旧泉質名)は、白や黄褐色に濁ることがあります。とくに硫化水素や炭酸ガスを多く含んでいて、pHが酸性に片寄ると、魅力的な白濁湯になることがあり、たいへん人気があります。さらに、お湯から析出した沈殿物が浴槽を厚く覆っていることがあり、これは嫌いか好きかに分かれますが、なかなか面白いものです。
硫酸塩泉
含有する陽イオンの種類で、細かく分かれています。
ナトリウムー硫酸塩泉(ボウ硝泉)とカルシウムー硫酸塩泉(石膏泉)は無色透明なことが多いので、単純温泉とあまり違いがよくわからないですが、飲んでみると、それぞれ特徴的な味がします。
浴用では皮膚の弾力性を回復し、引き締める効果が強いので、しわのばしの湯、といわれます。飲用では便秘に良く効くので、長期の旅行などには重宝します。
新鮮なうちは透明ですが、浴槽に注入して時間がたつと緑褐色に濁ってきます。酸性の温泉に多いので、浴感は酸性泉に準じます。
鉄泉
上の鉄ー硫酸塩泉(緑礬泉)のほかに、鉄ー炭酸水素塩泉(炭酸鉄泉)と単純鉄泉などがあります。新鮮なものは美しい緑色ですが、このような状態に出会えるのはたいへん稀だと言われています。
浴槽ではたいてい酸化が進んで、いわゆる赤湯になっています。
鉄は微量な成分なので、浴感は塩類泉の泉質により異なります。浴感より色を楽しむべきでしょう。また、飲用では鉄分補給に良く、貧血に即効性があるといわれています。中高年の女性に人気があるようです。
冷鉱泉に多い泉質です。
硫黄泉
日本人はとくに硫黄泉が好きですが、外国人にはあまり評判良くないようです。含まれる硫黄の状態によって、透明な緑色だったり、白濁したりと、色の変化が面白い泉質です。酸性の硫黄泉(硫化水素泉)は火山の近くにあり、白濁湯が多いので、秘湯気分が満点です。
食塩泉に硫黄がともなってくる含硫黄ー塩化物泉は、硫黄の香りと食塩泉のぬくもり感が同時に味わえて、たいへんお得な泉質といえます。単純硫黄泉はちょっと注意が必要です。硫黄の含有量が少ないものでは、加熱や循環で容易に失われてしまうので、ただのお湯に変貌していることがあります。冷鉱泉の沸かし湯に多いようです。
炭酸泉
二酸化炭素(炭酸ガス)が溶け込んでいる温泉です。単純CO2泉と略されることもあります。いわゆるサイダーなので、新鮮なものは飲むと清涼感があって美味しいようです。 2015/6/19 更新
残念ながら冷鉱泉が多く、浴用に加熱すると炭酸ガスの大部分が抜けてしまうのでただのお湯になってしまいます。ここは我慢して冷たい源泉浴槽に浸かりたいものです。はじめは辛いですが、長く入っていると不思議にぽかぽかしてきます。これは炭酸ガスの吸引で抹消血管が拡張して血行が良くなるせいだといわれています。
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